お肉というのは相場が常日頃変動しています。
かといってお肉屋さんの店頭の価格が毎日変わることはないですよね。
だからといって、利益計算を適当に計算しているわけではありません。
ある程度仕入価格の変動を見越しながら、なるべくお客様には迷惑をかけないように利益を計算して販売価格を決定しています。
それでは、お肉屋さんではどのように利益を計算しているのでしょう。
簡単に見て行きたいと思います。
まず基礎的な取り決めとして、
*Pはある商品の販売単価
*Qはある商品の販売数量
*Cはある商品の仕入単価
*Πはギリシャ語の大文字のパイと読みます。ある商品の売上総利益。当面これを利益と呼びます。
*また在庫は考えません。
上記を利用すると、
PQは売上高
CQは仕入原価(ここでは販売原価)
となります。
また、
売上総利益(Π)=売上(PQ)-売上原価(CQ)
Π = PQ-CQ (1)
と表現できます。
この(1)式の両辺を売上PQで割って100をかけると
Π÷PQ×100 = (1-C÷P)×100
利益を売上で割ったものに100を掛ける・・・これは一般的に利益率(π)と呼ばれるものです。
*πはギリシャ語で小文字のパイと読みます(ブログ最後のTIPSを参照ください)。
利益率は、
π=(1-C÷P)×100 (2)
と表示されます。
また、利益率がπのとき原価率は
原価率=100-πであらわせます。
つまり利益率が30%のとき、原価率は70%となります。
(2)の両辺から100を引くと
π-100=100-C÷P×100-100
さらに両辺にマイナスをかけると、
100-π = C÷P×100
100-π は原価率ですから
原価率 = C÷P×100となります。
仕入単価(C)は決まっているとして、上記利益率を確保するための販売単価(P)をもとめなければなりません。
(2)より
π=(1-C÷P)×100
Pについて変換すると、
P = C÷(1-π÷100) (3)
となります。
この(1-π÷100)ですが、実は原価率を100で割ったものです。
つまり原価をこの数値でわれば、目標利益を達成するための販売単価Pが決まります。
この数値を値入率とも呼びます。
たとえば仕入値900円の商品からπを40%稼ぎたいときは
(3)より、
P=900÷0.6
=1500円
となります。
確認のためπを計算すると、
π=(1500-900)÷1500×100=40%となります。
まれに40%の利益なら原価に1.4かければいいんじゃない?という方がいます。この場合、Pは1260円(1.4×900)、πは28.6%と目標からかけ離れてしまいます。
(実際に店頭でスタッフがよく起こすミスなので注意です。)
そうかじゃあ目標の利益率を得るためには、原価を原価率で割ればいいんだな?簡単じゃないかと思うでしょう。でもそこが肉屋経営の難しさ。
実際には、設定した価格ですべてが売り切れるとは限りません。消費期限が近づいて、値引きをするかもしれません。売れ残って廃棄をするかもしれません。
また、お肉の加工中には、脂肪や筋などの商品にはなりきれないものや、作業くずが発生します。
これを歩留まりといいます。
現実には消費税もあります。
これらをすべて考慮に入れた上で、値入率を決めておかないと、目標の利益率はとうてい達成できません。
この点については後日ご紹介します。
- TIPS 大文字と小文字
- 経済学や統計学、そして会計の世界ではローマ字(およびギリシャ語)の大文字がある数字や変数をあらわす記号として用いられます。そしてその文字の対応する小文字がその数字や変数の変化率やなにかに占める割合として利用されます。 たとえば、大文字のΠ(パイ)が利益だとすると小文字のπ(パイ)は利益率として利用されます。
ピンバック: 肉屋の会計は « 肉屋なう!動画・TEXTで九州大分より肉屋の裏側をお届けします。