うーん、ハーフ(雑種)に生まれたかった。

今回は、CJOの「セーノ!」9月号の取材もあり、
当店の指定牧場「小手川豚トンファーム」へお邪魔しました。

小手川豚トンファームでは「三元交雑種(以下、LWD)」という種類の豚を飼育しています。
読んで字のごとく、3種類の豚を掛け合わせた雑種ということです。
いわゆる「雑種強勢」を利用して、効率よくおいしい豚肉を生産しようというものです。
LWDのLはランドレース(デンマーク原産)のメスです。
これにWの大ヨークシャー(英国原産)のオスを掛け合わせます。
そして誕生するのが、LWです。
このLWのメスに、デュロック種(D、アメリカ原産)を掛け合わせます。

そして生まれてきた子豚がLWD、三元交雑種となります。
これが一般的にお肉屋さんで販売される「白豚」となります。

雑種である白豚と比較されるのが、「黒豚」です。
黒豚はバークシャー純粋種です。
純粋種は雑種にくらべて飼育がとても難しいといわれています。
一回に出産する子数がすくなく、発育が遅いのです。
ただし、黒豚は脂身の甘み、赤身のきめ細かさは絶品です。
そのためとても高価なものになります。

白豚は逆に多産(一回に14~6匹)で、発育が早いので低コストで生産できます。三元交雑種では、デュロックという赤身がおいしいとされる豚をかけることで、おいしさも増しています。
きちんと丁寧に育てられた白豚肉。これが実においしいのです。

簡単に説明したところで、動画も交えながら豚の飼育についてみていきます。

動画:三元交雑豚(LWD)あかちゃんと母豚

大きく横たわっているのが、母豚(ぼとん)のLWです。
母豚は妊娠してから4ヶ月程度で出産します。
生まれた子豚(LWD)は26日間ほど、母乳で育てられます。

生まれてまもないのに、人が近づいたりすると、いっせいに小屋に逃げ込んだりします。

動画:三元交雑豚(LWD) 離乳直後

子豚は生後一ヶ月後で、離乳されます。
離乳直後は、ミルクを与えます。その後、とうもろこしなどを原料にした飼料で肥育されます。

子豚と離れた母豚はすぐに種付けされ、出産準備に入ります。

動画:三元交雑豚(LWD) 出荷直前

子豚は生後180日程度で110kg程度に成長します。
豚は出荷され、パッカーと呼ばれる業者をへて、お肉屋さんに納品されます。
それ以降は、ブログ記事「君は豚の何を知っていて、「ぶた、ぶた」ゆうのか。」をごらんください。

さてここまで見てきた小手川豚トンファームの豚肉は、下記にてお求めいただけます。
□九州食肉学問所 直売所
□ネットショップ

また当店の運営するカフェでは、かつサンドなどがお召し上がりいただけます。
カフェ小邦寡民

こっそりとお得な情報→http://butcher.jp/

それでは、また次回。

おまけ動画:デュロック あかちゃんと母豚

余談ですが、母豚LWに掛け合わせるD(デュロック)の動画です。

君は豚の何を知っていて、「ぶた、ぶた」ゆうのか。

いま宮崎の口蹄疫で大変なのは豚肉も同じ。
高級牛肉よりも豚肉への影響のほうが、消費者の懐を直撃することになりそうです。

4-5年前に比べると、豚肉は格段に美味しくなっています。
一昔前は「豚肉はくさくて・・」なんて方とても多かったんですよ。
各地でもブランド豚が開発され、セールも盛んにおこなわれています。
国産牛肉が高い中、豚肉が一躍テーブルミートのスターダムにのし上がりました。

いったいどの豚肉がおいしいの?
ブランド豚っておいしいの?
黒豚ってなに?黒いお肉なの?
という質問をお客様からよく受けます。

そこで今回から3回に分けて、豚肉についてみていきます。

最初は基本中の基本 「豚肉ってなに?」です。

私たちが普段何気なくお店で購入する豚肉のほとんどが、「三元交雑種」という種類のものです。この三元交雑種については次回詳しく説明します。

pig2
*三元交雑種(写真提供:小手川豚トンファーム)

高くておいしいというイメージのある「黒豚」に対して「白豚」とも呼ばれます。
白豚はスーパーなどでも売られている最もポピュラーな豚肉です。
黒豚が240日前後飼育されるのに対し、白豚は180日程度とエコノミーな仕上がりです。
エコノミーですが、養豚農家の努力で、十分おいしい豚肉に仕上がっています。

さてひとこと豚肉っていってもいくつかの部位に分かれます。
やはり、肉質も用途も違ってきます。
われわれの食生活に欠かせない豚肉でも、以外と部位を知らない方が多いようです。
しっかりとポイントをおさえ、上手に買い物をしたいですね。

おいしい豚肉に出会うためには、まず豚を農場指定で1頭買いしているお肉屋さんをみつけることです。
品質のぶれが少なくことが良い豚肉を仕入れる目をもっている証拠でもあります。
なんでもいいから安い豚肉を仕入れているお肉屋さんはやはり敬遠すべきです(非常に多い)。
そして、部位ごとにきちんと用途を提案しているお肉屋さんが親切です。

豚を1頭まるごと仕入れると、加工場に依頼して、部分肉(パーツ)に分割します。
豚パーツ1
昔は店内で骨はずしをしていたのですが、いまではとてもそんな暇はありません。
コスト面・衛生面からも専門業者に任せています。

上写真は豚の半分です。半丸もしくは半頭セットと呼びます。

半丸の中には通常、
豚ロース 約4.5kg
豚ヒレ 0.6kg
豚肩ロース 2.5kg
豚バラ 約5.0kg
豚ウデ 約5.0kg
豚モモ 約8.0kg

が入っています。
この各部位を、余すことなく上手に使い切るのが、お肉屋さんの頭の使いどころです。

最初にロース・ヒレです。
豚パーツ2
ロースは大きくフォア・ミドル・エンドに分かれます。
フォアはロース芯にロースカブリと呼ばれるすこし固めのお肉が付いています。牛肉でゆうとちょうどリブロースにあたります。
脂が多いようにみえるので、敬遠されるお客様も多いのですが、とんかつや厚切りステーキにすると、やわらかくコクのある料理になります。是非一度お店でフォアロインを頼んでみてください。

ミドルロインはもっともポピュラーなロースです。
うす切り、しゃぶしゃぶ用、とんかつ用など何でも合います。
やわらかいのですが、味が単調になりがちです。
エンドは、モモ肉との境目です。すこし筋目があるので、うす切りか切り落としに使います。

豚パーツ3
上写真は肩ロースです。
左が頭部側、右がロース側になります。
左側にいくほど肉質が固くなり、筋も多くなります。

肩ロースは、ロースよりも若干固めなのですが、味の濃さはロースよりも強めです。
厚切り肩ロースで、ソテーやカツをするのが、豚肉好きの醍醐味です。
チャーシューや煮豚にも使われます。

豚パーツ4
次は豚バラです。
豚バラは、脂が多いというだけで、お客様には嫌われることが多いようです。
肥育の悪い豚肉だったりすると、脂身の臭みが強くなるのでしょう。
特に外国産の安い豚肉だとアクが強いです。

豚肉嫌いの人は、あまり良い豚バラに出会えなかったことが原因にあるようです。
いろんなスーパーの豚肉をみていますと、豚バラを無理やり引き伸ばして、盛り付けている店があります。
こうゆうお店の豚肉はまず買わないほうがよいでしょう。安い豚の証拠です。

豚パーツ5
次に豚ウデです。
ウデ肉は前足部分のお肉です。肉質は若干固く、繊維が入り組んでいるため、切り落としやこま肉にスライス
されることが多いです。ただし味はもっとも良い部位です。
野菜炒めや、豚汁、焼きそばにつかうとよく合います。

豚パーツ6
最後に豚モモ肉です。
豚モモはうす切り、一口カツ、煮豚など、用途が多様です。

豚モモはさらに、
豚パーツ7
ウチモモ、ソトモモ、その他(ランプ+シンタマ)に分かれます。
ウチモモは一口カツ用・煮込み用
ソトモモはうす切り用・煮込み用
その他は切り落とし用・煮込み用
となります。

部位によってもさらに用途別に切ってもらう部分を選ぶとより美味しい料理に仕上がります。

豚肉のしゃぶしゃぶをするにも、あっさりいきたいのならモモ肉もしくはロース肉。
コクを重視したいのなら肩ロースもしくはバラ肉、と用途に合わせると、さらにおいしく召し上がれます。

余談ですが、肩ロースのしゃぶしゃぶは「ごまダレ」であわせてみてください。コクが深くなり、おいしい牛肉を食べている感覚が味わえます。

豚肉は上記のほかに、
豚頭肉・・焼きそば、トン汁、野菜炒め用
豚チマキ・・ミンチ・煮込み用
豚スペアリブ・・焼肉、煮込み用
があります。詳しい説明は割愛します。

豚の内臓肉については、後日取り上げます。

次回は、「豚の種類」についてです。三元交雑種のなぞや、黒豚などさまざまな豚を取り上げます。

それでは。