「黒毛和牛カルビください」といっても、とても大変な作業なんですよ。

今年の花見は例年に比べても早かったですね。
なんでも3月の平均気温は過去最高だったとか。円安のおかげで、気温も上昇気運なんでしょうか。

上昇といえば、4月から、油類がのきなみ値段アップですね。何年か前の食糧危機を彷彿とさせる上昇です。

花見といえば、バーベキュー。バーベキューといえば、黒毛和牛のカルビ。黒毛和牛も数が厳しく高値です。大変な世の中ですね。

黒毛和牛のカルビとひとことにいっても、これがとても大変なんです。ロースはちゃっちゃっとできるんですけど。

カルビは要するに牛肉のバラ肉。このバラ肉は内臓を守るために、脂肪がたっぷりとついていて、赤身の部分は美しい刺しが入り、とても濃厚な味です。

みんな大好きですよね。

ただ肉屋にとっては宝探しのようなもの。ひとつ間違えば大損!ってことになりかねません。

鹿児島黒牛(鹿児島県産黒毛和牛)の5等級のバラ肉です。これはアトバラ(ソトバラ、トモバラともいう)です。重量は約18kgくらい。この脂の塊の中からカルビを切り出していきます。
後バラ・ノーマル

表面の薄膜や筋、脂を丁寧に取り除いていき、カルビ用の冊をとります。アトバラには「ササニク」という希少部位があります(下の画像、右上)。また左から2番目のカルビプレートは脂分が多く、濃厚なカルビとなります。それ以外は多少固めなので並カルビです。取り除いた脂のなかで、赤身が多少混じっているものは、細切れ用に取っておきます。
カルビスペック

上記でとったカルビ用冊をさらにきれいにして、商品化していきます。 少し厚切りでカルビのおいしさを堪能できるようにカットしました。
上カルビ

次にナカバラ(ウチバラともいう)です。じつはこいつがやっかい。
中バラ・ノーマル

ナカバラには、カイノミ、ショートプレート、ゲタというとてもおいしいカルビが眠っているのですが、ザッツオール!あとは脂と細切れにしかなりません。カルビはその分高値になりますね。ただ細切れをきちんと販売できれば、その分コストダウンできます。
バラスペック

カルビ用冊をとって商品化していきます。下がショートプレート。三角バラとの切断面なので、肉質がそっくり(というか同じ)です。そのうえにちょい顔をだしているのが、カイノミです。カイノミステーキも楽しめます。
牛特上カルビ

今回アトバラとナカバラでしたが、勘のいいかたは「マエバラってあるんじゃね?」と思うでしょう。
もちろん。あります。

ただ学問所では、マエバラはちょっと特殊な使い方をしています。
後日ご紹介します。

*上記写真は衛生面に十分配慮して撮影しております。

見た目にごまかされるな!その2:ブリスケコブ

見た目にごまかされるな!その1:ハンキングテンダー
に続き第2弾です。

繰り返しますが、決して「食べてはいけない」ということではありません。

でもごまかされてはいけません。

まずは写真を。
ブリスケ
これはすごい霜降り、値段も高そうですね。

と思った方。

だまされています。

この商品は前回と違って「国産品(黒毛和牛も含む)」なのですが、めちゃくちゃ堅いです。

写真のように切り落としになっていれば、そんなに問題ありません。

ただし、カルビのような厚さで売られていたら要注意です。

店員さんに「これ、ブリスケコブ?」とたずねてください。

もしYESなら、買わないほうがよいでしょう。

そう、この部位は「ブリスケコブ」と呼ばれています。

ブリスケコブについては、
ブリスケって、あんた誰?何?
で詳しく取り上げています。

ものすごい霜降りが入ったようにみえるのですが、この脂身部分はとても堅く、焼肉用には適しません。

ブロックでビーフシチューなどにするととてもおいしいのですが、煮込んでもやわらかくなるのに時間がかかります。

等級によりますが100g200円から300円なら煮込み用、切り落とし用で購入しても、まあ文句はないとおもいます。

以上です。

ブリスケって、あんた誰?何?

さて今日はマエバラです。
大きなくくりでは、「まえ」と呼ばれる部類に入ります。
「まえ」には、これまでにご紹介した

ウデ(肩)」、

肩ロース」、

そして今回の「マエバラ」が分類されます。

また「バラ」というくくりでは、前バラの他、

ナカバラ
アトバラ

がバラ3兄弟です。

マエバラは大きく「ブリスケ」と「サンカクバラ」に分かれます。

サンカクバラ」の商品化は以前ご紹介しましたので、今回はマエバラからサンカクバラとブリスケの分割、そして、ブリスケの商品化を見ていきます。

最初はマエバラの分割です。

牛マエバラの商品化 その1

マエバラは、サンカクバラとブリスケに分かれます。
ブリスケはさらに、カルビプレートとブリスケこぶに分割されます。
最初に表と裏の脂と筋を除去していきながら、サンカクバラとブリスケに分割します。(動画中では、ブリコブといっていますが誤りです)。

次にブリスケを商品化していきます。

牛マエバラの商品化 その2

ブリスケは大きくカルビプレートとブリスケこぶに分割されます。
ブリスケこぶを外していきます。ここは難しいので、筋肉の噛みをよくみながら、ゆっくりと捌いてください。

ブリスケこぶは切断面が霜降りでとてもやわらかそうに見えますが、とても硬いので要注意です。
スーパーなどのセールではこの部分がカルビカットされているのを良く見ます。
反面、煮込み用にするととてもよい味と食感になります。

のこったカルビプレートは表面の脂をきれいに除去します。
カルビプレートはひょうたんのような形をしています。
筋肉繊維にそってカルビ冊どりをしていきます。

先端の細長いほうはとてもやわらかいのですが、
お尻側のナカバラとの切断面は硬くなります。
バラ側のほうは、切り落としか煮込み用が無難です。

ブリスケは脂も含めて味の濃い部分です。
用途によっては料理のコクを引き立てます。
ただし、脂身の酸化がすすむとにおいが強くなるので、夏場の販売には注意が必要です。