全国の中小飲食店経営者に捧ぐ。メニュー価格は利幅に余裕を持って。春以降の食肉業界はさらにさらに厳しいかもしれない。

4月には消費税率が3%ポイント上がり8%となる。

お肉屋さんからお肉を仕入れて、看板メニューにしている中小の飲食店さんは、よもや3%だけお肉の値段が上がるとは夢々思わないほうがいい。

食肉業界、ひいては畜産業界では、非常に恐ろしいことが起こっている。

まず価格上昇の背景には国産牛肉の高騰がある。もちろん牛肉そのものの価格をあげなければいけないのだが、すべてを転嫁するのは相当厳しい。高いものをさらに高くしなければならない。ある程度豚肉・鶏肉にしわ寄せがくるだろう。
国産牛肉の高値の背景には、宮崎県で起きた口蹄疫や、震災により汚染牛が広がったことによる殺処分の影響が大きい。そこに昨年末に起きた注入肉を始めとする偽装事件が拍車をかけている。

ホルシュタイン種や交雑種などの和牛より価格帯の安い牛に人気が集まるが、それこそもともと数の少ない牛種であり、2等級~3等級を中心に高値が続いている。売れない2月になっても強気の相場である。

子牛も不足しており、ホルシュタイン種の飼育履歴を見ても、北海道産の子牛を九州で肥育するケースが多くなってきてる。 また黒毛和牛自体も子牛の価格は高騰していて、1年、2年先の相場も高いものになると思われる。

和牛、揺らぐ安定供給 子牛の取引価格が最高値」 1/16 日経新聞

国産牛肉の相場が高くなると、外国産牛肉を使ってみようかとなる。 輸入商社や卸売業者はかなり在庫を絞っており、販売実績のない新規取引先への手当はなかなか厳しい状況だったようだ。おかげで米国産、豪州産はじわりじわり値上がりしている。

米飼育牛、寒波に震える-牛肉生産減で外食産業のコスト増か  1/14 ブルームバーグ

米国の牛飼育数は6年連続で減少し、牛肉の価格は上昇を続けている。
そこに追い打ちをかけているのが、米国や豪州で起きている干ばつだ。 米国では2011年のテキサス州での干ばつや、12年の中西部での干ばつで飼料穀物価格は高騰している。そこで寒波による飼料や燃料の増加が牛肉業界の利益を圧迫している。

カリフォルニア州では、干ばつで飼料となる干し草が彼、飼料コストが上昇している。その影響を避けるため、生産数の削減が起きている。

干ばつが米加州の畜産業者を直撃-牛肉価格高騰でも恩恵なく」 2/10 ブルームバーグ

オーストラリアでも牛肉価格の高騰が見込まれている。これも干ばつの影響である。

干ばつで豪州の牛肉輸出増加-業者、コスト抑制へ飼育数削減
政府はアメリカやオーストラリアと牛肉の関税引き下げの交渉に入っているが、3月以降の需要期に輸入牛肉価格の高騰は避けられないであろう。

また現在日本国内で水面下で広がっている恐ろしいことがある。豚流行性下痢(PED)が日本各地で発生しているのだ。
この病気は子豚の命を奪う。10日齢以下の子豚の死亡率はほぼ100%だ。

4県5200頭以上死亡 豚の下痢、被害広がる」 1/29 農業協同組合新聞

現在相当数の子豚が死亡しており、2ヶ月、3ヶ月先の国産豚肉相場は高騰しそうだ。多くの飲食店には牛肉よりも豚肉の価格上昇のほうが痛手となるかもしれない。輸入ポークに期待したいところだが、こちらも高値が続いていている。

鶏肉は年末以来の高値が続いている。これも円安や燃料費の値上がりで、なかなか下がる傾向にない。いや、一層厳しいものになるかもしれない。

食肉業界は牛肉、豚肉、鶏肉と全面的なコスト増に迫られている(まあ、ずっとそうなんだけど)。今年はここ10年で一番深刻かもしれない。

飲食店の方は、3月以降、メニュー価格の改定には十分な利幅を確保することをお奨めしておきたい。

どこまで続く牛丼戦争。とにかく儲からない経営学のモデルケースばかりだ。とても三光、いや参考になります。

牛丼業界は価格破壊の最先端を行っていた業界だろう。デフレが続く日本経済の中で、牛丼一杯280円という革命は、他の飲食店業界にとっても脅威だった。

残念ながら、いまはその安売りのツケを払っているといえるだろう。牛丼業界は深刻な客離れと売上の低迷に苦しんでいる。

三光Mフーズの「東京チカラめし」。新機軸の「焼き牛丼」で牛丼御三家の吉野家、すき家、松屋を猛烈に追い上げる勢いだった。
東京チカラめし

だがそれも大手牛丼三社が同様の商品を展開始めると、力尽きた。チカラめし食べて、力尽きた。

半年で39店一気に閉鎖 「東京チカラめし」何があったのか

三光Mの売上高は2014年6月期の業績予想を大幅に下方修正した。売上高は20.8%マイナス。店舗閉鎖に伴う損失を含め、7億円を超える損失を計上した。
東方見聞録などはじめとする飲食店業界も低迷した。

原因はコンビニの競争や急激な出店による過密エリアができたことという。

もちろんそれも原因であろうが、一番大きな原因は「安売りから抜け出せなかった」、「顧客が求めるニーズを掴めなかった」ことにあると思う。

そんな中

なか卯が牛丼を販売終了へ 12日からは「牛すき丼」投入、他メニューも強化

キン肉マンの牛丼として一時名を馳せた「なか卯の牛丼」が静かに販売中止となった(2/10)。継続商品として「牛すき丼」を投入するが、牛丼は基本的には同じゼンショーグループのすき家に一本化することになった。なか卯は本来の丼ものやうどんに集中する。

牛丼御三家が苦しむなかで、それ以外の小規模チェーンの再編が進みだした。

最も牛丼御三家自体も主力商品の値下げが功を奏さず苦戦をしてきた。
だがこの冬吉野家が一歩抜きでたかのように思える。

吉野家、1月の既存店売上高14%増 すき家と松屋は1%減

吉野家の既存点売上高は昨年12月の前年同月比16%増につづき、この1月も14%増だった。対するすき家と松屋はいずれも1%減である。

大きな理由は吉野家が昨年末に投入した「牛すき鍋膳」である。

吉野家牛すき鍋膳
特製の鍋でぐつぐう煮込むすき焼きが提供される。並盛りで580円だ。
発売と同時にヒットした。

吉野家の新商品「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」が、発売2カ月で700万食突破

吉野家は「うまい、安い、早い」の牛丼業界を長く縛ってきたコンセプトから抜け出し、「うまい、安い、ごゆっくり」という新コンセプトを打ち出した。これが当たった(かのように見える)。

筆者も2月になってようやく食べてみた。実はそれ以前にも吉野家を訪れるチャンスはあったのだが、この牛すき鍋膳を頼むには至らなかった。オペレーションがとてもきちんと回っているとは思われず、カウンターを見渡すと、食べ終えた鍋が片付けられずのこったまま。スタッフがいま作業している牛すき鍋膳に時間がかかり、牛丼そのもの提供も遅れがちだ。まだ客数が少ないからなんとかなっているという感じだった。そんな中で、牛すき鍋膳の注文は躊躇していた。
吉野家牛すき鍋膳
そんな感じでようやく食べてみたのが深夜1時だ。そこそこ客数はいたが、さほど待たずに運ばれてきた(友人が頼んだ牛丼はもっと早く来た)。
前評判通り、熱々の鍋で煮込みながら食べるすき焼きはとても美味しかった。ただ甘すぎる。横で牛丼を書き込む友人が羨ましくなった。まあ、一度食べればいいかな?そんな味だった。
そして、冬はいいけど、春先からはどうするのだろうという勝手な心配もよぎった。

吉野家は「牛すき鍋膳」というオリジナル商品を投入し、低価格競争から抜けだそうとした。それは半ばうまくいった。だが、吉野家のファンが「どんなもんか一度食べてみよう」という動機で来店したのも確かであろう。店内を見渡しても「新しい客層を掴んだ」とはとても思えない。ゴリ押しのオペレーションでなんとか乗り切っているだけのようにも感じられる。

マクドナルドを始め、低価格のファーストフード業界はのきなみ低迷している。コンビニの台頭はその大きな理由であろう。ただ、コンビニでも買えるような商品しか提供できていないのもまた事実である。
顧客は低価格にも反応しなくなった。価格が下がれば需要が上がるというのは、経済学の原則だ。だが、その価格弾力性は1を切った。それどころかもはや0であろう。要するに需要曲線は垂直である。この罠にハマっている。

だが安易な価格上昇は顧客に受け入れられない。需要曲線を右にシフトすることのできる本当の意味でのオリジナル商品か革新的なコンセプトの提供が求められている。
吉野家は「牛すき焼き鍋膳」と「ごゆっくり」という新商品と新コンセプトを導入して、ある程度は需要曲線を左にシフトさせた。だがそれがホンモノでなかれば押し戻されるだろう。

すき家もだまってはいない。

「すき焼き」メニューが復活すき家の「牛すき鍋定食」販売開始

というニュースが流れた。
すき家牛すき鍋定食

すき家から言わせてみれば「復活」ということらしいが、まあでも吉野家の好調をみての真似と言わざるを得ない。こんな商品で「老舗感」を出してもしょうがない。
すき家は吉野家に比べるといろんなメニューが多々ある。しかも、深夜帯はスタッフが少なく、強盗に入られまくられている。牛すき焼き鍋を準備している間に「食い逃げ」が増えるんじゃないかと危惧する(笑)
オペレーション的には吉野家よりも不利であろう。

吉野家にとってはこれでも十分に脅威だろう。新コンセプトのもと提供される新しいメニューが安売りに巻き込まれば、全てが崩壊する。

「ごゆっくり」はメニューの提供だけではだめなはずだ。内装、メニュー全体の構成、スタッフの質。すべての改革が求められる。

この先も目を話せない業界である。

回転寿司業界よ、もう諦めなさい。子供に正しいものを教えて欲しい。

ようやくメスが入るのか。

消費者はもちろんそうだが、肉業界に携わる人々の思いはまた特別かもしれない。

「メニュー表示厳密化でシャケ弁当が「ニジマス弁当」になる?」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140202-00000015-pseven-soci

昨年来の食品偽装問題で、消費者庁が表示の厳密化に動いている。
特に飲食店でのメニューがやり玉に上がっている。

ようやく、回転寿司の表示にもメスが入ることになりそうだ。

もちろん業界団体は激しく抵抗している。

「メニュー名が定着しており、(代用魚の名前の表示だと)消費者が混乱する」」

なにをいっているのだろう。

問題は「代用魚」だ。

上記の記事で言えば、鮭は、実はニジマスだ。サーモントラウトだ。

一言いっておこう。

「代用魚が許される業界で、本物なんか使われていないでしょうよ。それは偽装ですよ。」

すき家(すき家ごめん)で朝食には鮭定食がある。 この鮭定食の鮭に一瞬でも本当の鮭が使われているだろうか。
(もしかしたら一匹分くらいは使われているのかもしれないけど)。

これが「ニジマス定食」になってしまったら、やはり消費者はちょっとひくだろうという気持ちはわかる。

適正な表示をすれば外食業界は大変な局面を迎えるだろう。でもやってほしい。子供の未来のために。
子供の未来のために
私の五ヶ月の次男がやけに反応をしめした「ホタテ」は本当にホタテであってほしい。でもそうじゃないなら、そう表示して、きちんと理解をした上で食べさせてほしい。

 

サーモンのにぎりが、実は「ニジマス」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
サーモンにぎり

 

ブリのにぎりが、実は「イボダイ」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
ぶりにぎり

 

大トロのにぎりが、実は「ガストロ」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
マグロにぎり

 

鯛のにぎりが実は「テラピア」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
鯛にぎり

 

ネギトロが実は「アカマンボウ」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
ネギトロ

 

合鴨のにぎりが実は「アヒル」かもしれない。でもいいじゃないか(写真はイメージです)。
合鴨にぎり
(あ、これはうちも問題だ)

言いたいことはこうだ。

代用魚というのは、「足りない時に使うかもしれない」とかじゃないでしょ。ずっとその代用魚つかってるんでしょ?ホンモノ使ってないんでしょ?じゃ、その代用魚の名前をきちんと表示しましょうよ。

ということ。併記からでもいいじゃない?