オーソドックスに勝るクリエィティブはなし。 片田舎の小さな肉屋の集客方法

肉カフェを始めて、約6ヶ月。いろんなトラブルもありながらも、お客様に着実に認知いただき、売上も順調に伸びている。利益はまだまだ苦しいが。

大分市内中心部よりもさらに遠いところから、鶴崎という東部の辺鄙な場所にあるお店に連日多くのお客様に来ていただき、本当に嬉しい限りだ。

特に2月に大幅改定したランチメニュー登場以後は、かなりの手応えを感じている。例年2月といえば、(うちに限っていえば)暇で暇でなんともならない月だった。それが今年は混みすぎてご来店いただいたお客様をお断りするようになるとは思わなかった。

そして、どこから噂を嗅ぎつけたのか、いいタイミングで地元のテレビ局さんから取材がきて、それが先週土曜日(OAB 「れじゃぐる ランチの女王」 3月9日)に放送された。
カフェ

鉄板ハンバーグ 肉汁

今回取り上げてもらったのが「鉄板ハンバーグランチ」。ハンバーグランチは九州南蛮渡来牛と小手川豚トンポークを中心とした九州産のお肉を使っている。肉汁を演出するために、へんな混ぜ物は一切していない。肉本来のおいしさを味わってもらうため、ソースもあっさりとしたものに。デミグラスソースやケチャップではせっかくの肉のうまみを消してしまう。やわらいけど肉の味がしっかり楽しめる。

やったことはとても単純なことばかりだった

2009年のオープンから去年の9月までは、カフェ&雑貨という形で展開していた。雑貨は雑貨専門店が強くかなわない。カフェとはいってもコーヒー等には力をいれておらず、ここも専門店にはとてもかなわない。いろいろ考えた結果、次の3点を強化した。

  • 肉屋のカフェだから肉を置いた。
  • メニューはオーソドックスなものに絞った。
  • イベントカレンダーを活用した。

突飛なことはまったくしていない。

肉カフェらしい品揃えってなんだろう。

去年9月から漠然と肉カフェという形で始めた。狭い陳列の中でどんな商品をおこうかと半年間試行錯誤した。

陳列されている商品は23アイテムほどだが、結局オーソドックスなものが売れるので、そこに絞り込んでいった。ランチで食べた材料のお肉がその場で買える。カフェに来たお客さんが待ち時間の間にぶらぶら眺めて注文するというシーンがが多くなった。

作業場では常時ネットショップの作業が回転していて、実は普通のスーパーよりも品揃えは多いのだが、そこは隠している。奥深い部分は知る人ぞ知る感じにしている。店頭で何キロも購入するお客さんがいたり、レアアイテムを購入しているお客さんをみて、知らずにランチをしているお客さんからびっくりされることも多い。テールやほほ肉なんかは陳列していても売れることはなかったが、隠したら売れるようになった(笑)

肉カフェの肉

結局オーソドックスな商品が売れる。

オーソドックスに勝るクリエイティブはなし

ランチメニューでオーソドックスとえば、いわゆる定番メニューだろう。カフェでいえば、ハンバーグランチやナポリタンかもしれない。大分というくくりでは、とり天定食やからあげ定食だろう。どこにいってもあるし、差別化しにくい。でもやはり安定して強いのがオーソドックスな定番メニューだ。 

クリエイティブというのは創作料理といえるかもしれない、小皿がたくさんでてくるやつだったり、盛り付けが手が混んでたり。でもはっきりいって、この手の料理を出す店で、長く続いたお店を見たことがない。愛されているお店ほど、オーソドックスな料理をきっちりとこなしている。

目立つためだけに突飛な料理を提供して話題作りをしてるところもあったり、流行に流されまくって、新規出店を繰り返すような店も多い。まあ、儲かっているからそうしてるんだろうとは思うが。

メニューをより肉カフェらしく、かつ末永く愛してもらうために、徹底的にオーソドックスなランチを追求することにした。結局いろいろ考えた手の込んだメニューよりもオーソドックスなもののほうが人気がでた。

鉄板ハンバーグ

世間ではやたらオリジナリティだとか、クリエイティビティだとか、珍しいことやって集客しましょうよとか、カネかけて販促して無理やり売り込むような商品も多い。まあ行政がそれを後をしていたからしょうがないのだが。

でも思う。「人間のこころの中に記憶として残るのは結局オーソドックスなものだよね。」

そして、またこう思う。「オーソドックスなものの追求が、小さいお店の生きる道」だと。

全国の中小飲食店経営者に捧ぐ。メニュー価格は利幅に余裕を持って。春以降の食肉業界はさらにさらに厳しいかもしれない。

4月には消費税率が3%ポイント上がり8%となる。

お肉屋さんからお肉を仕入れて、看板メニューにしている中小の飲食店さんは、よもや3%だけお肉の値段が上がるとは夢々思わないほうがいい。

食肉業界、ひいては畜産業界では、非常に恐ろしいことが起こっている。

まず価格上昇の背景には国産牛肉の高騰がある。もちろん牛肉そのものの価格をあげなければいけないのだが、すべてを転嫁するのは相当厳しい。高いものをさらに高くしなければならない。ある程度豚肉・鶏肉にしわ寄せがくるだろう。
国産牛肉の高値の背景には、宮崎県で起きた口蹄疫や、震災により汚染牛が広がったことによる殺処分の影響が大きい。そこに昨年末に起きた注入肉を始めとする偽装事件が拍車をかけている。

ホルシュタイン種や交雑種などの和牛より価格帯の安い牛に人気が集まるが、それこそもともと数の少ない牛種であり、2等級~3等級を中心に高値が続いている。売れない2月になっても強気の相場である。

子牛も不足しており、ホルシュタイン種の飼育履歴を見ても、北海道産の子牛を九州で肥育するケースが多くなってきてる。 また黒毛和牛自体も子牛の価格は高騰していて、1年、2年先の相場も高いものになると思われる。

和牛、揺らぐ安定供給 子牛の取引価格が最高値」 1/16 日経新聞

国産牛肉の相場が高くなると、外国産牛肉を使ってみようかとなる。 輸入商社や卸売業者はかなり在庫を絞っており、販売実績のない新規取引先への手当はなかなか厳しい状況だったようだ。おかげで米国産、豪州産はじわりじわり値上がりしている。

米飼育牛、寒波に震える-牛肉生産減で外食産業のコスト増か  1/14 ブルームバーグ

米国の牛飼育数は6年連続で減少し、牛肉の価格は上昇を続けている。
そこに追い打ちをかけているのが、米国や豪州で起きている干ばつだ。 米国では2011年のテキサス州での干ばつや、12年の中西部での干ばつで飼料穀物価格は高騰している。そこで寒波による飼料や燃料の増加が牛肉業界の利益を圧迫している。

カリフォルニア州では、干ばつで飼料となる干し草が彼、飼料コストが上昇している。その影響を避けるため、生産数の削減が起きている。

干ばつが米加州の畜産業者を直撃-牛肉価格高騰でも恩恵なく」 2/10 ブルームバーグ

オーストラリアでも牛肉価格の高騰が見込まれている。これも干ばつの影響である。

干ばつで豪州の牛肉輸出増加-業者、コスト抑制へ飼育数削減
政府はアメリカやオーストラリアと牛肉の関税引き下げの交渉に入っているが、3月以降の需要期に輸入牛肉価格の高騰は避けられないであろう。

また現在日本国内で水面下で広がっている恐ろしいことがある。豚流行性下痢(PED)が日本各地で発生しているのだ。
この病気は子豚の命を奪う。10日齢以下の子豚の死亡率はほぼ100%だ。

4県5200頭以上死亡 豚の下痢、被害広がる」 1/29 農業協同組合新聞

現在相当数の子豚が死亡しており、2ヶ月、3ヶ月先の国産豚肉相場は高騰しそうだ。多くの飲食店には牛肉よりも豚肉の価格上昇のほうが痛手となるかもしれない。輸入ポークに期待したいところだが、こちらも高値が続いていている。

鶏肉は年末以来の高値が続いている。これも円安や燃料費の値上がりで、なかなか下がる傾向にない。いや、一層厳しいものになるかもしれない。

食肉業界は牛肉、豚肉、鶏肉と全面的なコスト増に迫られている(まあ、ずっとそうなんだけど)。今年はここ10年で一番深刻かもしれない。

飲食店の方は、3月以降、メニュー価格の改定には十分な利幅を確保することをお奨めしておきたい。

今ある顧客は捨てなさい。焼肉屋経営で億万長者になる5つの鉄則

家族で焼肉屋にいく。これはとても楽しいことだ。家族でわいわい言いながら、大人も子供もいっしょになって肉を焼いて、ほおばる。
でもやっぱり焼肉って高い。そうそう毎週(あるいは毎月)いけるもんじゃない。4月からは消費税率もあがるし、車や家のローンもある。景気の先行きも不透明だ。

こんな経済状況(サンクス!アベノミクス)の中で、業績悪化に苦しむ焼肉店も多いはずだ(うちの焼肉屋は最近売上がいいようだが)。
しかも肉の値段は高騰している。もう廃業しようかという焼肉店も多いだろう。

でもちょっとまってほしい。「あの焼肉屋、いつも賑わっているよな?」そんなお店が近くに1軒はあるはずだ。

今回、焼肉経営コンサルタントとして名高い学長がその秘訣をなんと無料公開する。

題して、

「焼肉屋経営で億万長者になる5つの鉄則」

である。

この原則を学んで、やるかやらないかは「あなた次第だ!

鉄則その1:メニュー表示はあいまいにしなさい。

儲からないあなたはメニューに「牛タン」だの「牛ホルモン」だの「牛」を入れているはずだ。

これはすぐにやめたほうがいい。

タンやホルモンに牛を使っていたら儲からないだろう。即刻メニューから牛の文字は消して、「タン」とか「ホルモン」に変えるべきだ。曖昧な表示にしておけば、豚タンや豚ホルモンを提供しても文句は言われない。

すると、あなたはすべてのメニューを曖昧にしてしまうかもしれない。

だから儲からないのだ!

豚や鶏肉にはあえて、「豚◯◯」とか「鶏◯◯」とかを残して置くのだ。そうすると残りのメニューをお客は勝手に牛肉だと勘違いする。心理学の応用である。システム1に起因する錯誤を生じさせる。利用可能性ヒューリスティックという(適当ですw)。

曖昧さは、対比されるものがはっきりとしているほど、巧妙な曖昧さになる。ここに億万長者になる秘訣がある。

メニュー成功事例

メニュー成功事例

鉄則その2:原材料にはとことんこだわりなさい。

お肉屋さんが始めた焼肉屋に特徴的なのが「和牛信仰」である。時代は変わってきた。霜降りは受け入れられなくなってきている。以前ならアメリカ産牛肉といった手もあった。日本人にあった味だが、アメリカ産も値段が高くなってきている。

世界は広いのだ! 日本人にあった赤身肉はまだまだどこかにあるはずだ。メキシコ、ブラジル、オーストラリアだった捨てたもんじゃない。なるべく肥育日数が少なく、生産コストが安い牛肉は世の中にはたくさんある。半加工品なら中国だって捨てたもんじゃない。
2014-02-11 12.00.59(写真はイメージです。)

国産やアメリカ産はやめるべきだ。

それともうひとつ。牛タンなどは皮をむく手間があるし、先っぽの固いところはどうしても残ってしまう。高価なメニューになりがちだ。これを安く提供できれば、顧客も喜ぶはずだ。

そこでタンは長方形の筒に加工して押し込み、羊羹みたいにするといい(できれば接着剤で接着すればなおよい)。それを冷凍して、スライスすれば、きれいな形の牛タンスライスが出来上がる。焼いても形が崩れない。接着した部分から灰汁がでてくるが、そんなのは気にしていられない。プライス重視だ。
タン(写真はイメージです。)
しかも牛ではなく豚タンを使えば完璧だ。薄くスライスすれば、すぐ火が通るし、牛か豚かすらわからなくなる。

鉄則その3:お肉以外のメニューを増やしなさい。

お肉のメニューはこだわればこだわるほど、在庫も増え、手間も増える。ハツやセンマイなどは揃えておいてもなかなか注文が入るものではない。そうしたメニューはさっさと捨ててしまえばいい。

じゃあどうするの?カルビ、ロース、ホルモンだけじゃ寂しくない?

焼肉屋のメニューは肉だけじゃなくてもいいはずだ。

サラダ、キムチ、ナムル、スープは当然のこと。子供の好きなフライドポテトやアイスクリーム。ジュースは飲み放題にしてもいい。そうしたものでメニューを彩ればいい。

サイドメニュー

甘いジュースはお腹が膨らむ

(写真はイメージです。)

顧客がもしお肉自体にちょっとした不満を覚えたとしても、サイドメニューが充実していれば、いま焼肉屋にいることすら忘れてしまうだろう。食べ放題飲食店としての満足度は上がるはずだ。。肉の原価は高い。合成科学物質でふくらませるのがより可能なサイドメニューを充実すれば、一人あたりの原価を劇的に減らすことが可能だ。
ここに億万長者になる秘訣がある。

鉄則その4:固定観念を捨てなさい。

お肉1人前といえば、約80gから100gだという固定観念を持っているなら、それを捨てなさい。約半分の肉にして、皿の大きさ、飾り付け、タレの化粧でかさ増しすべきだ。

「肉本来の味を楽しんでほしい」などといって無理して生肉をそのまま提供するようなことはやめたほうがいい。肉本来の味なんてしないのだ。むしろ一旦冷凍してしまい、牛肉か豚肉かわからないくらいにうす切りにして、解凍して風味を失わせ、しかもタレもしくは塩ダレでガッツリ色づけをするのがいい。顧客はなにかの繊維を噛み締めて、たっぷりかかったタレの味がすれば満足だ。甘ければいいのだ。

ホルモンタレ漬け(写真はイメージです。)

焼肉業界のみならずどんな業界でもそうだろう。固定観念というものが儲からない最大の理由となっている。その固定観念を打ち破り、新たな価値を提供することこそが億万長者への道だ。

鉄則その5:今ある顧客は捨てなさい。友人も捨てなさい。

ここまで来るとあなたは不安に駆られるかもしれない。これでは今のお客さんは不満に思ってしまうのではないだろうか。
ご安心なさい。今のお客さんは他のお店に行くだけだ。この原則を実施すれば、さらなる厚い顧客層にあなたの店は迎えられる。天にも登る気持ちでいればいい。

大切なのは「最大多数の最大幸福」だ。ベンサムも言っているではないか。

「ちょっとぐらいの汚れ物ならば残さずに全部食べてやる~中略~妙なプライドは捨ててしまえばいい そこからはじまるさ~」とミスチルも歌っているではないか。

その代わり忙しくなるから、アルバイトスタッフは増やしておくべきだろう。なにもわからない高校生がいいかもしれない。正社員など入れてはいけない。
経営者はなるべく一般消費者と顔をあわせない立場に身をおく必要がある。また友人にも自分が億万長者な焼肉屋を経営しているなどいわないほうがいい。そして稼いだすべての資産は妻に名義変更しておくのがいい。

あとあといろいろ面倒になるんでね。

※なお当店ではこの5つの鉄則はどれも使っておりませんので、儲かっていません(笑)