君は豚の何を知っていて、「ぶた、ぶた」ゆうのか。

いま宮崎の口蹄疫で大変なのは豚肉も同じ。
高級牛肉よりも豚肉への影響のほうが、消費者の懐を直撃することになりそうです。

4-5年前に比べると、豚肉は格段に美味しくなっています。
一昔前は「豚肉はくさくて・・」なんて方とても多かったんですよ。
各地でもブランド豚が開発され、セールも盛んにおこなわれています。
国産牛肉が高い中、豚肉が一躍テーブルミートのスターダムにのし上がりました。

いったいどの豚肉がおいしいの?
ブランド豚っておいしいの?
黒豚ってなに?黒いお肉なの?
という質問をお客様からよく受けます。

そこで今回から3回に分けて、豚肉についてみていきます。

最初は基本中の基本 「豚肉ってなに?」です。

私たちが普段何気なくお店で購入する豚肉のほとんどが、「三元交雑種」という種類のものです。この三元交雑種については次回詳しく説明します。

pig2
*三元交雑種(写真提供:小手川豚トンファーム)

高くておいしいというイメージのある「黒豚」に対して「白豚」とも呼ばれます。
白豚はスーパーなどでも売られている最もポピュラーな豚肉です。
黒豚が240日前後飼育されるのに対し、白豚は180日程度とエコノミーな仕上がりです。
エコノミーですが、養豚農家の努力で、十分おいしい豚肉に仕上がっています。

さてひとこと豚肉っていってもいくつかの部位に分かれます。
やはり、肉質も用途も違ってきます。
われわれの食生活に欠かせない豚肉でも、以外と部位を知らない方が多いようです。
しっかりとポイントをおさえ、上手に買い物をしたいですね。

おいしい豚肉に出会うためには、まず豚を農場指定で1頭買いしているお肉屋さんをみつけることです。
品質のぶれが少なくことが良い豚肉を仕入れる目をもっている証拠でもあります。
なんでもいいから安い豚肉を仕入れているお肉屋さんはやはり敬遠すべきです(非常に多い)。
そして、部位ごとにきちんと用途を提案しているお肉屋さんが親切です。

豚を1頭まるごと仕入れると、加工場に依頼して、部分肉(パーツ)に分割します。
豚パーツ1
昔は店内で骨はずしをしていたのですが、いまではとてもそんな暇はありません。
コスト面・衛生面からも専門業者に任せています。

上写真は豚の半分です。半丸もしくは半頭セットと呼びます。

半丸の中には通常、
豚ロース 約4.5kg
豚ヒレ 0.6kg
豚肩ロース 2.5kg
豚バラ 約5.0kg
豚ウデ 約5.0kg
豚モモ 約8.0kg

が入っています。
この各部位を、余すことなく上手に使い切るのが、お肉屋さんの頭の使いどころです。

最初にロース・ヒレです。
豚パーツ2
ロースは大きくフォア・ミドル・エンドに分かれます。
フォアはロース芯にロースカブリと呼ばれるすこし固めのお肉が付いています。牛肉でゆうとちょうどリブロースにあたります。
脂が多いようにみえるので、敬遠されるお客様も多いのですが、とんかつや厚切りステーキにすると、やわらかくコクのある料理になります。是非一度お店でフォアロインを頼んでみてください。

ミドルロインはもっともポピュラーなロースです。
うす切り、しゃぶしゃぶ用、とんかつ用など何でも合います。
やわらかいのですが、味が単調になりがちです。
エンドは、モモ肉との境目です。すこし筋目があるので、うす切りか切り落としに使います。

豚パーツ3
上写真は肩ロースです。
左が頭部側、右がロース側になります。
左側にいくほど肉質が固くなり、筋も多くなります。

肩ロースは、ロースよりも若干固めなのですが、味の濃さはロースよりも強めです。
厚切り肩ロースで、ソテーやカツをするのが、豚肉好きの醍醐味です。
チャーシューや煮豚にも使われます。

豚パーツ4
次は豚バラです。
豚バラは、脂が多いというだけで、お客様には嫌われることが多いようです。
肥育の悪い豚肉だったりすると、脂身の臭みが強くなるのでしょう。
特に外国産の安い豚肉だとアクが強いです。

豚肉嫌いの人は、あまり良い豚バラに出会えなかったことが原因にあるようです。
いろんなスーパーの豚肉をみていますと、豚バラを無理やり引き伸ばして、盛り付けている店があります。
こうゆうお店の豚肉はまず買わないほうがよいでしょう。安い豚の証拠です。

豚パーツ5
次に豚ウデです。
ウデ肉は前足部分のお肉です。肉質は若干固く、繊維が入り組んでいるため、切り落としやこま肉にスライス
されることが多いです。ただし味はもっとも良い部位です。
野菜炒めや、豚汁、焼きそばにつかうとよく合います。

豚パーツ6
最後に豚モモ肉です。
豚モモはうす切り、一口カツ、煮豚など、用途が多様です。

豚モモはさらに、
豚パーツ7
ウチモモ、ソトモモ、その他(ランプ+シンタマ)に分かれます。
ウチモモは一口カツ用・煮込み用
ソトモモはうす切り用・煮込み用
その他は切り落とし用・煮込み用
となります。

部位によってもさらに用途別に切ってもらう部分を選ぶとより美味しい料理に仕上がります。

豚肉のしゃぶしゃぶをするにも、あっさりいきたいのならモモ肉もしくはロース肉。
コクを重視したいのなら肩ロースもしくはバラ肉、と用途に合わせると、さらにおいしく召し上がれます。

余談ですが、肩ロースのしゃぶしゃぶは「ごまダレ」であわせてみてください。コクが深くなり、おいしい牛肉を食べている感覚が味わえます。

豚肉は上記のほかに、
豚頭肉・・焼きそば、トン汁、野菜炒め用
豚チマキ・・ミンチ・煮込み用
豚スペアリブ・・焼肉、煮込み用
があります。詳しい説明は割愛します。

豚の内臓肉については、後日取り上げます。

次回は、「豚の種類」についてです。三元交雑種のなぞや、黒豚などさまざまな豚を取り上げます。

それでは。

衝撃!!霜降りのようで霜降りでない。成型肉の秘密

霜降りたっぷり黒毛和牛サーロインステーキ。
みなさんもテレビや雑誌で、あのきれいな霜降りをみて、おいしそうとおもったことでしょう。
でも半端なく高いですよね。A5クラスになると1枚200gのステーキが安くても3000円以上はします。

国産牛肉は高い。オーストラリア産は安いが固い。

そこで業界の努力の結果生まれたのが、【成型肉】というものです。

成型肉は、霜降りのサーロインステーキをイメージして、一般的には、オーストラリア産の赤身肉に、国産の牛脂を針で注入するか、結着材を使って赤身と脂身をくっつけたものです。
前者を注入肉。後者を結着肉と呼びます。

そこで今回は注入肉を皆さんにご紹介します。
☆九州食肉学問所は成型肉の取扱いを一切していません。
ブログ写真撮影のためだけに仕入れしました。

下記の写真は注入サーロイン肉のブロックです。
注入サーロイン1
いかにも霜降りたっぷりの美味しいお肉に見えます。
でもプロがみれば、一発で注入肉と分かります。

表示を確認すると、
注入サーロイン2
牛脂注入加工牛サーロインとあります。ものものしいですね。
正式名称は味付け牛肉(加工肉)のようです。
オーストラリア産の牛肉(もとがサーロインであったかは不明)に牛脂をはじめとしてさまざまな添加物が入っているのが分かります。

ウィキペディアで「成型肉」を調べると
「成型肉(せいけいにく)は、くず肉や内臓肉を結着剤で固め、形状を整えた食肉のこと。 結着させるため、主に牛乳由来のカゼインナトリウムやカラギーナン、アルギル酸塩などが使用されている。
カゼインナトリウムが使用されている場合は、牛乳アレルギーの人は注意が必要である。」
とあります。

こんな風にかかれると成型肉が存在すら許されない悪いものに取られがちですが、私は必ずしもそうは思いません。
だた、このお肉があたかも国産牛サーロインだと誤解を与えるような表現・表示で販売されている場合は問題です。
消費者が成分表示など、きちんと理解したうえで購入することが大切だと思います。

次は実際にステーキにカットして焼いてみましょう。
注入サーロイン3
すこし薄めのステーキ(厚さ約1cm)でスライスしたところ1枚129gありました。

フライパンで焼いてみます。
牛サーロイン注入4
この写真をパッとみただけではこれが成型肉かわからないですね。
しかも牛サーロインにありがちなところで肉が割れています。
ただ気にになるのは、脂(?)がにじみ出ては蒸発していくという点です。

牛サーロイン注入5
実際調理後の重量は89g。調理前には129gだったので、70%ほどになっています。
やはり大量の肉汁が飛んでいってますね。

肉自体がからからになっていないのか気になるところです。
ナイフを入れてみると肉汁があふれ出ます。
これが注入肉の威力なのでしょうか?
牛サーロイン注入6
カットする弾力をみてもやわらかいお肉の感じです。

口に含んでみると、ステーキとゆうよりは、ハムみたいな感じです。ところどころ筋っぽく歯にあたります。
肉汁そのものは味は悪くないようです。臭みはありますが、少ないです。
ステーキソースなどでごまかせば、問題ないかもしれません。

これが100g200円くらいで売られているなら、相場といえるかもしれません。この値段以上で売られている場合は、私なら迷わず外国産の生肉を選ぶでしょう。(*あくまでも私個人の見解です。)

結着肉のほうも、「やわからカルビ」や「やわらかサイコロステーキ」といった名称でスーパーやネットショップで売られています。
こちらはまたの機会にご紹介します。

繰り返しますが、成型肉が適正な表示と価格で販売され、消費者がきちんと納得して購入することが大切です。
知らなかったばかりに、必要のない添加物を取り込むことになります。
十分な注意が必要ですね。

ステーキの王様 牛ヒレ まがいものにご注意

普段見向きもされないが、結婚式のシーズンやクリスマス、年末年始と、人気のでてくるのが、「牛ヒレ肉」。

今日はこの牛ヒレ肉をご紹介します。
サブタイトルが「まがいものにご注意」となっています。こちらは最後に。

牛ヒレ肉はサーロインの内臓側についていて、ほとんど運動することなく成長した赤身肉です。
きめが細かく、やわらかいお肉です。
脂肪が少ないので、健康にも良いお肉です。

さて下の写真は牛ヒレ肉のブロックです。左側が頭、右側が尾です。
牛ヒレ1

このヒレ肉の筋や脂をきれいに引いていったものが下の写真です。
牛ヒレ2
次の写真で説明する「テート」と呼ばれる部分は脂と筋がお肉の間に埋まっています。赤身を傷つけないようにきちんと処理をします。
(*サイドマッスルはつけたままにしています。)

次にヒレを大きく3分割します。
牛ヒレ3
この三分割で、左から、「テート」、「シャトーブリアン」、「フィレミニヨン」となります。
これは名前が変わるだけでなく、やわらかさ、見た目が大きく異なるためです。
シャトーブリアンは皆さんも聞いたことがありますよね。

一般的には、
「シャトーブリアン」>「フィレミニヨン」>「テート」となります。
値段もこの順で安くなっていくのが普通です。

さてちょっとマニアックな分割ですが、
牛ヒレ4
シャトーブリアンはさらに「シャトーブリアン」と「フィレ」に分かれます。
「フィレミニヨン」はさらに「トゥルネド」と「フィレミニヨン」に分かれます。
ただしこちらの5分割はあまり一般的ではありません。

牛ヒレ5
上記写真はシャトーブリアンの断面です。適度な霜降りでとても美味しそうですね。

九州食肉学問所では、「シャトーブリアンステーキ」と「テート・フィレミニヨンのミックスステーキ」の2つを商品化しています。
お求めの際には表示をよくご確認ください(まあ単価も違いますけどね)

さてここからがサブタイトルの「まがいものにご注意」について説明していきます。

実は牛肉にはこのヒレ肉にそっくりな安い部位があります。
「とんび(とうがらし)」と呼ばれる部位です。ウデ(肩)肉にくっついている部位で単品で買えば、ヒレの半分くらいの値段です。
通常は肩焼肉用や、タタキに使います。

下写真がとんびです。
牛とんび1
唐辛子の形にもにているので「とうがらし」とも呼ばれます。

周りの筋・脂を引いていきます。
牛とんび2

とんびはお肉の真ん中に一本筋があるので上手にこれを引いていきます。
牛とんび3

下写真は筋を引き2分割されたとんびです。
牛とんび4
この時点ですでにヒレ肉に似ていますよね。

この下側の部分をカットしていくと、ヒレステーキにそっくりのステーキが取れます。

食べてみるまでは判断がむずかしい場合もあります。
またランプのランボソもカットの仕方ではヒレ肉に見た目そっくりです。

まあこんなことするお肉屋さんは存在しないことを祈るばかりです。

それでは。