ステーキの王様 牛ヒレ まがいものにご注意

普段見向きもされないが、結婚式のシーズンやクリスマス、年末年始と、人気のでてくるのが、「牛ヒレ肉」。

今日はこの牛ヒレ肉をご紹介します。
サブタイトルが「まがいものにご注意」となっています。こちらは最後に。

牛ヒレ肉はサーロインの内臓側についていて、ほとんど運動することなく成長した赤身肉です。
きめが細かく、やわらかいお肉です。
脂肪が少ないので、健康にも良いお肉です。

さて下の写真は牛ヒレ肉のブロックです。左側が頭、右側が尾です。
牛ヒレ1

このヒレ肉の筋や脂をきれいに引いていったものが下の写真です。
牛ヒレ2
次の写真で説明する「テート」と呼ばれる部分は脂と筋がお肉の間に埋まっています。赤身を傷つけないようにきちんと処理をします。
(*サイドマッスルはつけたままにしています。)

次にヒレを大きく3分割します。
牛ヒレ3
この三分割で、左から、「テート」、「シャトーブリアン」、「フィレミニヨン」となります。
これは名前が変わるだけでなく、やわらかさ、見た目が大きく異なるためです。
シャトーブリアンは皆さんも聞いたことがありますよね。

一般的には、
「シャトーブリアン」>「フィレミニヨン」>「テート」となります。
値段もこの順で安くなっていくのが普通です。

さてちょっとマニアックな分割ですが、
牛ヒレ4
シャトーブリアンはさらに「シャトーブリアン」と「フィレ」に分かれます。
「フィレミニヨン」はさらに「トゥルネド」と「フィレミニヨン」に分かれます。
ただしこちらの5分割はあまり一般的ではありません。

牛ヒレ5
上記写真はシャトーブリアンの断面です。適度な霜降りでとても美味しそうですね。

九州食肉学問所では、「シャトーブリアンステーキ」と「テート・フィレミニヨンのミックスステーキ」の2つを商品化しています。
お求めの際には表示をよくご確認ください(まあ単価も違いますけどね)

さてここからがサブタイトルの「まがいものにご注意」について説明していきます。

実は牛肉にはこのヒレ肉にそっくりな安い部位があります。
「とんび(とうがらし)」と呼ばれる部位です。ウデ(肩)肉にくっついている部位で単品で買えば、ヒレの半分くらいの値段です。
通常は肩焼肉用や、タタキに使います。

下写真がとんびです。
牛とんび1
唐辛子の形にもにているので「とうがらし」とも呼ばれます。

周りの筋・脂を引いていきます。
牛とんび2

とんびはお肉の真ん中に一本筋があるので上手にこれを引いていきます。
牛とんび3

下写真は筋を引き2分割されたとんびです。
牛とんび4
この時点ですでにヒレ肉に似ていますよね。

この下側の部分をカットしていくと、ヒレステーキにそっくりのステーキが取れます。

食べてみるまでは判断がむずかしい場合もあります。
またランプのランボソもカットの仕方ではヒレ肉に見た目そっくりです。

まあこんなことするお肉屋さんは存在しないことを祈るばかりです。

それでは。

口蹄疫:感染疑いのスーパー種牛の「忠富士」 殺処分に

毎日jp
口蹄疫:感染疑いのスーパー種牛の「忠富士」 殺処分に

抜粋
「三重県松阪市の松阪牛連絡協議会副会長、瀬古清史さん(61)は約500頭の肥育牛を育てているが、その半数が「忠富士」から生まれた子牛だ。」

影響が拡大しつつあります。

なぜあの偽装はおきたのか。

皆さんもご記憶に残っていると思われる代表的な産地(格付け偽装)に、

1:船場吉兆偽装事件(2007年)
佐賀牛にも関わらず但馬牛・三田牛と偽っった産地偽装

2:飛騨牛偽装事件(2008年)
規格外の牛肉や馬肉などを飛騨牛と偽って偽装し販売

3:但馬牛産地偽装事件(2009年)
ある焼肉店が実際には20%程度しか但馬牛を使用していなかったため公正取引委員会から排除命令

*ミートホープは論外。

上記に出てきた但馬牛(兵庫)・三田牛(兵庫)・飛騨牛(岐阜)をはじめとして、有名な松坂牛(三重)、
米沢牛(山形)、 前沢牛(岩手)、近江牛(滋賀)などが黒毛和牛の最高級品として有名なブランドです。

全体 肉用種 乳用種
頭数 2,922,200頭 1,889,200頭 1,033,000頭
地域別百分率
北海道 18.30% 9.83% 33.79%
東北 14.28% 16.37% 10.45%
北陸 0.83% 0.60% 1.26%
関東・東山 11.57% 7.62% 18.80%
東海 5.10% 3.95% 7.20%
近畿 3.17% 3.68% 2.23%
中国 4.81% 4.34% 5.68%
四国 2.42% 1.51% 4.08%
九州 36.64% 47.68% 16.45%
沖縄 2.89% 4.41% 0.12%

上表は地域別の肉用牛の飼育頭数です。
これをさらに各県別の飼育数比率で見ると(肉用種のみ)
岩手 5.20%
山形 2.31%
岐阜 1.30%
三重 1.66%
滋賀 0.61%
兵庫 2.28%

となります。
しかも(たとえば)兵庫で生産されるすべての黒毛和牛が、4-5等級ではないですから、実際にはもっと少ないはずです。鹿児島(18.52%)や、宮崎(14.11%)、佐賀(2.59%)をはじめとする九州は肉用種のほぼ50%を占めるのですから圧倒的に少ない数字といえます。

これが偽装の起きた背景です。
有名ブランドで高価なのに供給量が極めて少ない。
こうした問題はもちろん肉だけの問題ではありません。
ですが、日本人に特有といっても過言ではない「産地主義」がもたらした問題かもしれません。