見た目にごまかされるな!その1:ハンキングテンダー

決して「食べてはいけない」ということではありません。

でもごまかされてはいけません。

見た目はものすごく霜降りでも、とても固かったり、まったく味がない場合があります。

今回は、そんなお肉の代表例を紹介します。

それは「ハンキングテンダー」です。
主に、アメリカ産とカナダ産が現在流通しています。

日本名で、「サガリ」という部位です。内臓の中に、一本ぶら下がっているような感じなのでそう呼ばれています。

下記は、そのハンキングテンダーの商品画像です。
ハンキングテンダー
霜降りが適度に入り、とてもやわらかくおいしそうですね。
見た目だけなら、100g400円~500円ぐらいの国産品に見えてしまいます。

サガリ
焼いて食べてみるとわかるのですが、確かに非常にやわらかいです。
このやわらかさなら、幼児でも食べれます。

ただし、大半のケースで「まったく肉の味がしない」のです。脂身も水っぽいです。
*味覚には個人差がありますし、牛肉にも個体差がありますので、あくまでも参考程度にお願いします。

ですから、このお肉が100g300円以上で売られていたら、よく考えたほうがよいでしょう。
100g160円~200円なら相場といえるかもしれません。

このお肉、量販店ではよく「ソフト焼肉用」などといって、タレ漬けにされ販売されています。
特売だと100g100円というプライスも最近珍しくはありません。

大切なときに、このお肉に飛びつくと失敗するケースがあるのでお気をつけください。

それでは。

ほっぺとしっぽがあまって大変なのです。

前回ご紹介した牛の内臓肉
牛の内臓肉を紹介するよ その1
牛の内臓肉を紹介するよ その2

毎回毎回一頭分仕入れるのですが、これをきちんと売りさばくのにはやはり苦労します。

まず、小腸とシマ腸は基本的にいつも足りません。夏は焼肉。冬は鍋。年中人気商品です。
この小腸を基準に仕入れをおこなっています。

そこで問題になるのが、牛テールと牛ホホ肉。
この2つは煮込み用商材として、冬場は足りないくらいに売れるのです。
問題は夏場。値段を結構安くしても、お客様は目もくれません。

そこで、とりあえず当店では煮込みます!一日中煮込みます!
夏場はこのテールとホホ肉は、在庫評価額0円(タン・マクミなどの評価額を上乗せ)にして、ミートソースやカレーなどの商品を作ります。

牛テールと牛ホホ肉の煮込み

牛テールと牛ホホ肉の煮込み中

なので当店に限って、煮込み料理は「冬」ではなく「夏」の料理・・・・
でも上質な国産牛肉のホホとテールで煮込んで作る料理はものすごいコクがあり最高です。

気分によってミートソースになったりカレーソースになったりしますが、6月中旬くらいから当店のCafe’小邦寡民でお召し上がりいただける予定です。

「おしりとほっぺのカレーライス」 安部さんの放飼いどりの卵とサラダ付き
「おしりとほっぺのミートソースパスタ」 サラダ付き

注意!! まだお召し上がりいただけませんよ!詳しくは小邦寡民のブログをチェックしつづけてくださいね。

衝撃!!霜降りのようで霜降りでない。成型肉の秘密

霜降りたっぷり黒毛和牛サーロインステーキ。
みなさんもテレビや雑誌で、あのきれいな霜降りをみて、おいしそうとおもったことでしょう。
でも半端なく高いですよね。A5クラスになると1枚200gのステーキが安くても3000円以上はします。

国産牛肉は高い。オーストラリア産は安いが固い。

そこで業界の努力の結果生まれたのが、【成型肉】というものです。

成型肉は、霜降りのサーロインステーキをイメージして、一般的には、オーストラリア産の赤身肉に、国産の牛脂を針で注入するか、結着材を使って赤身と脂身をくっつけたものです。
前者を注入肉。後者を結着肉と呼びます。

そこで今回は注入肉を皆さんにご紹介します。
☆九州食肉学問所は成型肉の取扱いを一切していません。
ブログ写真撮影のためだけに仕入れしました。

下記の写真は注入サーロイン肉のブロックです。
注入サーロイン1
いかにも霜降りたっぷりの美味しいお肉に見えます。
でもプロがみれば、一発で注入肉と分かります。

表示を確認すると、
注入サーロイン2
牛脂注入加工牛サーロインとあります。ものものしいですね。
正式名称は味付け牛肉(加工肉)のようです。
オーストラリア産の牛肉(もとがサーロインであったかは不明)に牛脂をはじめとしてさまざまな添加物が入っているのが分かります。

ウィキペディアで「成型肉」を調べると
「成型肉(せいけいにく)は、くず肉や内臓肉を結着剤で固め、形状を整えた食肉のこと。 結着させるため、主に牛乳由来のカゼインナトリウムやカラギーナン、アルギル酸塩などが使用されている。
カゼインナトリウムが使用されている場合は、牛乳アレルギーの人は注意が必要である。」
とあります。

こんな風にかかれると成型肉が存在すら許されない悪いものに取られがちですが、私は必ずしもそうは思いません。
だた、このお肉があたかも国産牛サーロインだと誤解を与えるような表現・表示で販売されている場合は問題です。
消費者が成分表示など、きちんと理解したうえで購入することが大切だと思います。

次は実際にステーキにカットして焼いてみましょう。
注入サーロイン3
すこし薄めのステーキ(厚さ約1cm)でスライスしたところ1枚129gありました。

フライパンで焼いてみます。
牛サーロイン注入4
この写真をパッとみただけではこれが成型肉かわからないですね。
しかも牛サーロインにありがちなところで肉が割れています。
ただ気にになるのは、脂(?)がにじみ出ては蒸発していくという点です。

牛サーロイン注入5
実際調理後の重量は89g。調理前には129gだったので、70%ほどになっています。
やはり大量の肉汁が飛んでいってますね。

肉自体がからからになっていないのか気になるところです。
ナイフを入れてみると肉汁があふれ出ます。
これが注入肉の威力なのでしょうか?
牛サーロイン注入6
カットする弾力をみてもやわらかいお肉の感じです。

口に含んでみると、ステーキとゆうよりは、ハムみたいな感じです。ところどころ筋っぽく歯にあたります。
肉汁そのものは味は悪くないようです。臭みはありますが、少ないです。
ステーキソースなどでごまかせば、問題ないかもしれません。

これが100g200円くらいで売られているなら、相場といえるかもしれません。この値段以上で売られている場合は、私なら迷わず外国産の生肉を選ぶでしょう。(*あくまでも私個人の見解です。)

結着肉のほうも、「やわからカルビ」や「やわらかサイコロステーキ」といった名称でスーパーやネットショップで売られています。
こちらはまたの機会にご紹介します。

繰り返しますが、成型肉が適正な表示と価格で販売され、消費者がきちんと納得して購入することが大切です。
知らなかったばかりに、必要のない添加物を取り込むことになります。
十分な注意が必要ですね。